なぜ胚盤胞は凍結保存できるのか?凍結胚が復活できる理由

不妊治療

前回、不妊治療の体外受精の各ステップの確率を調べたが、調べる中で不思議に思ったことがある。なぜ精子や胚盤胞は凍結保存できるのだろう?生身の人間なら寒冷地でこごえてしまったとしても、凍傷で死んでしまうだけではないだろうか。解凍されたときに復活できないだろう。でも胚盤胞の凍結保存・融解・移植は普通に行われている。どうして胚盤胞は凍結してその後復活できるんだ?
同じような疑問を持った読者の方はいないだろうか。気になったので、いろいろ調べてみて、自分なりの理解を書き綴ってみる。何かの参考になれば。

気になる方はこのまま読み進めてスッキリしてください。

普通、液体は冷やされて個体になるとき、体積は小さくなる。
例外がある。水は冷やされて氷になるとき体積が大きくなる。これがやっかいだ。ヒトのカラダ、細胞内には水分が含まれている。細胞内外の水分が冷やされて氷晶ができると、体積がそれまでよりも大きくなるので、細胞を傷つけ、破壊してしまう。
すなわち、普通に冷凍したのでは細胞でもダメなのだ、復活できない。
そこで、あらかじめ脱水処理をして「緩慢冷凍」(ゆっくり冷やす)や急速冷凍による「ガラス化保存」などが現在の技術として確立されており、これらの技術を用いると細胞を傷つけずに低温にできる。
現在の主流のガラス化保存の原理だが、氷晶が発生する時間もなく急速に冷やす(−130℃以下)と、水は非晶質(アモルファス)と呼ばれる、ガラス状態になり、体積が大きくならず、細胞を傷つけない、ということのようだ。
そして低温では細胞の活動は一時停止され、長期の保存が可能となる。
なお、保管中や運搬中も液体窒素などで冷やして−130℃以下の低温をキープする必要がある。氷晶の形成を回避するためだ。また、融解時も急速に温めて氷晶による細胞ダメージを防ぐ必要があるようだ。

このようにして胚盤胞や精子のような単純細胞は凍結保存が可能となっている。一方、臓器だったり人体のような複雑で大きな物は事前処理時の均一な処理や均一な急速冷凍および急速融解が難しく、まだ研究開発段階のようだ。

なお霜焼けは冷えによる血行不良が原因の炎症で、皮膚や皮下組織の障害と定義される凍傷の第一段階の位置付けらしい。

SF用語では「コールドスリープ」という言葉があるようだ。これは人間を冷凍して低温状態にして、宇宙船での惑星間航行などの間の老化を防ぐ技術だ。遠くない将来、人体も冷凍保存・そして無傷での復活ができるようになるのかもしれない。

まとめ
水分が氷になると体積が大きくなるため、普通に冷凍すると細胞にダメージを与える。
胚盤胞の凍結には急速冷凍(ガラス化保存)を用いて細胞へのダメージを回避している。
生身の体の冷凍保存(コールドスリープ)は研究開発段階。

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