「もし私達の子なら、血液型はA型よ」
子供の頃、親から言われたことがある。
(ふーん、じゃあオレはA型なんだな)
そう思っていた。
中学生の頃だろうか、理科でメンデルの遺伝の法則を習ったときだった。
「あれ?おかしいぞ、親の血液型がどんな組合せでも子がA型に確定せんぞ」
時は流れた。
なかなか自分の血液型を調べる機会は訪れない。
社会人になってから、ふと思い立ち、血液型を調べる目的で献血をしに行った。
献血直前に医師との面談があった。
「今日のこのあとの予定は?」医師から聞かれた。
友人と飲みに行くと答えたら
飲みに行くか献血するかの二択を迫られた―。
そんなことがありながらも未だに自分の血液型が何型なのか知らなかった。
7月の土曜日、有力候補の不妊治療クリニックに妻と向かった。
クリニックの待合室は超満員で、独特の雰囲気だった。
たくさんの人がいるにもかかわらず、誰ひとり話をしていなくて、張り詰めたような、なんともいえない空気感。
腰痛で整形外科には何度も訪れたことがある。
そこはじっちゃんばっちゃんの交流所となっていた。
世間ばなしが飛び交うような状況だ。
しかし婦人科はちがう。
重い、ピリピリとした空気が場を包み込む。
まるで、
「なんで私だけこんな目に」
「何も悪いことしてないのに」
「もうダメかもしれない」
そんな心の声が聞こえてくる。
その場でスマホをイジっていてもこっちまで疲れてしまう。
長時間の待ち時間の後、ようやく診察となった。
結論から言われた。
心臓病の主治医の先生からの採卵への合意は得られず、採卵できない。
この病院もダメだったか。
また別の病院を探さなきゃ。
しかし国内はもう無理か。
国内の大学病院のような心臓病も扱えるような病院に代理出産は伏せて将来の技術革新に備えて受精卵だけ作っておきたいと言って押し通すか。
それとも海外の病院か。
わたしは次の手を考え始める。
妻は反発した。諦められない、と。
先生「そういうことなら―」
不妊治療クリニックの先生は近所の総合病院の循環器科との連携を提案してくれた。
知人の医師がいるらしく、相談してもらえる。
ただし、心臓病主治医に採卵する旨の連絡をして筋を通した方がいいとのこと。
普段なかなか来れないので感染症検査(血液検査)をして行くことになった。
会社で毎年やっている健康診断で血を抜かれるとき、何度か聞いたことがある。
「血液型は分かるんですか?」
その度に「その検査は入ってないんです」との回答。
しかし今回は血液型も調べるらしい。
ついに親の子ではなかったことが明るみに出てしまうのか。
翌週、妻は主治医と話し、そして再度不妊治療クリニックへ。
循環器科の先生との相談の結果を聞く。
- ワーファリンを飲みながら採卵に臨む。
- 出血のリスクは普通の人と同程度。
- 出血が止まらなかったら循環器科先生に対処を協力してもらえる。
- 総合病院~不妊治療クリニック間は徒歩3分程度。
Goサインが出た。
さあ、舞台は整った。
そして自分の血液型も判明していた。
O型だった。
Oh!
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